くまってプラモつくるん?

おっさんモデラー”くま”がプラモをつくったりコンペを開いたりするよー

ショートストーリー 「あるカメラマンに出会った。」

UC 0093某日。第2次ネオ・ジオン戦争の真っただ中。

サイド6のバーで、ちょっといかつい感じの男と同席した。

 

男は、サイド6のTV局、報道担当のカメラマンだと名乗った。

 

そしていろんな話をしているうちに、同業?のよしみで・・・と、

いろんな写真を見せてくれた。

デジタル なんて言葉は、とっくに死語になっている中、なんと「紙」ベースの写真や資料を。

 

「ネットワークアーカイブにこんなデータ置いておいたら、俺の命がいくつあっても足りないかもな・・・アハハ」

 

そんな軽口をたたきながら、まずはこの資料。

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「こ、これは?」

 

「珍しいだろ?これは当時報道関係者に送信された、アナハイムのプレスリリースだよ。おれはこの、撮影会の最初の時間に申し込んだんだよね。」

「最初?気合入ってますね。」

 

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「最初に行くと、こんな面白い写真も撮れる。」

リック・ディアスと、マラサイ?ですよね・・・。あぁ。アナハイムの発表会だから!こんなこともあるんですね。」

「ネモの1型前がマラサイ だからね。そりゃ両方見れたし面白かったよ。でもこんなもんじゃないんだよ。この現場の面白さは」

 

「ほう!」

 

私はこの写真や資料だけでも結構満足だったんだが、彼はつづけた。

 

「この資料の写真の後ろ・・・見てみなよ。」

 

「これ・・・これって?」

 

彼が言っていた言葉の意味が分かった気がした。

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「後ろに写ってるの・・・現行のジェガンに似てますね。」

「ああ、ほとんど完成していた、ジェガンの試作機たちだよ。」

 

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「ほんとだ!すでにカラーリングまで今のジェガンとほとんど一緒じゃないですか!」

「そうさ。ネモはさ、こいつの運用テスト機だったんだよ。もちろん量産ベースに乗せるためにムーバブルフレームを採用して、量産型として練りこまれてきてはいたけどもな。リニアシートもようやく量産・実用化という時期に、もうほとんどジェガンは想定されていたんだよ。こういうのに出くわせるかもしれない!と思って、一番最初の枠をとって、正解だったな と、思ってる。」

 

「す・すごいスクープですね。」

 

「だろ?サイド6の報道局では当然放送した。けど、1回こっきりであとはスポンサー様の権限とやらで配信停止さ。ネットストレージ上のデータからも、こいつらにはアクセスできなくなってた。なので・・・今手元に紙として持ってるんだよ・・・。」

 

この男、なにをあっさりこんな話をしてるんだ?

 

続きを聞いて、なんとなくわかった。

 

「俺はさ、あの、1年戦争でもカメラマンだったんだよ。当時はムービー専用カメラで生中継してた。あの、たった3分で12機のリックドムがやられるところ、見たことあるだろ?いまでも「あの頃は今」的な番組で出てくるあれ。あれの、カメラマンだったんだよ・・・。民間であそこまで戦場に密着したのは後にも先にも俺だけだ!

 

先月、会社を辞めたんだよ。最近じゃ軍が自分たちで動画を配信してやがるし、俺たちの仕事はもう、ないのかもしれんよ。」

 

死線をくぐり抜けた男の言葉。すごく寂しいものだった。

が彼の写真は、まさに、「戦争」を映し出していた。

 

「このネモ発表会で、思ったね。戦争はまだまだ続く。あと5年は、続くってね。」

 

くしくも0093.某日。ネモ発表会から、ちょうど5年と4日が経過したところだった。

 

 

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「見てくれ。これが俺が最近アナハイムに潜り込んで撮った偽装ジェガンだよ。

 多分こいつ、中身はガンダムだぜ」

 

 

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